背水
水の上で身体を完全に伸ばし、首、肩、腕、腰・・・
と無駄な力を抜いていくと、
と無駄な力を抜いていくと、
音を立てて関節が緩んでゆくのがわかる。
呼吸が落ち着くと、自然に耳のあたりが喫水線に定まっている。
次の瞬間、息を一杯に吸い込む。
体幹が浮力を持ち、視界が変化する。
身体はわずかな姿勢の変化や水流によって容易に翻弄される。
そして、息を吐き出す。
聞こえる音が劇的に変化する。
身体は腰をアンカーとして沈み込み、安定する。
口だけが唯一外界との通路として水上に出ている。
そして、また、息を吸う。
ある時、この感覚を歩くときに使えないか、と思い立った。
垂直に作用する浮力を、水平に感じてみたらどうかと。
つまり、呼吸により水上では浮力が生まれるように、
陸上では前進する力が生まれるのではないか。
立ったまま、背中に水をイメージする。
呼吸をしつつ、前へ。
なかなかうまくいかない。意識しすぎなのだ。苦しくなってくる。
でも、忘れた頃に我知らず実践していたりもする。
呼吸が、周囲の感覚をも取り込むことであるとするならば、
水を背にして、いつも歩いていたい。
それは本当は、人間にとって限りなく自然な感覚であると思うのだ。
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